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コラム

研修をオンライン化するためのポイント

新たな学びを構築するフューチャーラーナーズ協会です。

今、世界が“移動”や“集合”に関して大きな制約を受けており、企業や学校では従来のやり方が全く通用しないという状況になっております。

このような現実に直面し、かつては集合で行っていた新人研修を大慌てでオンラインによるリモート研修に切り替えたという企業もたくさんあるかと思います。良質なコンテンツが用意され、デバイスが行き渡っていたとしても、いざ研修をオンラインで実行するとなると様々な問題が発生してきます。

そこで今回は、研修をオンライン化する時に留意する点や効果をあげるためのポイントなどをご紹介したいと思います。

 

「学び手がどういう学びを欲しているか」を考える

研修をオンライン化する時に、提供側としては“良いコンテンツを用意する”ことに注視しがちですが、見落としてはならないのは“学び手がどういう学びを欲しているか”という視点です。学び手ファーストですね。これは商品開発と似ているのですが、学び手を学びの消費者に例えるとしたら彼らのニーズを考え、消費を促すような仕掛けを学びの中に含ませるということです。飽きない学び、学んでいることが楽しいと思えるような学び、それはまるで良質な番組をつくるような手法かもしれません。提供側はディレクターとなり、学び手を惹きつけるような演出を盛り込むことが期待されているのです。

 

集中時間の限界を知る

人間の集中時間には限界があります。1980年代にイタリア人のフランチェスコ・シリロによって考案された時間管理術「ポモドーロ・テクニック」というのがありますが、これは25分の集中と5分の休憩を繰り返すというもので、25分以上の集中は脳が消耗していくということが生理学に解明されているそうです。しかし、数多あるオンライン研修のコンテンツを見てみると、25分を優に超えたものもたくさんあります。そして、オンライン研修では集合研修よりも学び手のストレスが大きいのも事実で、通信の不具合やノイズなどもあるので、よほど注意して聞かないと聞き取れないようなことも多々あるそうです。こんな状態で1時間くらい続けてやられては、注意力も散漫になりヘトヘトになってしまいますよね。

では、どのようにすれば学び手が活性化されるのか。それには時間の区切りと双方向性を取り入れるタイミングがポイントになってきます。現代人の集中力ということで考えると、25分どころか15分くらいが限界とも言われます。テレビ番組でも15分くらいで区切りとしCMに入っていますよね。そう考えると1本のコンテンツの長さは15分以下にして、途中でクイズを出すなどして要所要所に双方向性を取り入れるのがいいのかもしれませんね。いずれにしても学び手が最後までウキウキした気持ちで、楽しみながら継続できる学びをデザインする必要がありそうです。

 

感情曲線をコントロール

言うまでもないことですが人間には感情があります。良質な文学や映画で私たちはあっという間にストーリーに引き込まれ、ハラハラドキドキしながら次の展開を心待ちにし、喜んだり悲しんだりしながら、最後には大きな感動に包まれるという体験をします。このように感情とともに物語をトレースするので、私たちはその文学や映画をいつまでも記憶として鮮明に定着させることになるのです。これと同じことが学びでも求められます。学びの中にストーリーを持たせ「次に何が起こるんだろう、何を教えてくれるんだろう」というワクワク感を持たせ、最後には「そうだったんだ!」という大団円を迎える…このように学びが感情とともに習得されると、定着率も上がってくることでしょう。

 

実利曲線にアプローチ

研修での学びが学校での学びと異なる点は、それがフォーマンスに結びつくという“実務における定着”が目的となっているところです。そうなると当然学び手も「今のこの学びは、一体何の役に立つのだろう」と気になってくると思います。いくら学びの内容が良くても目的がぼんやりしていては学びにも身が入らないというもの。このようにならないためにも、企業は「今、学んでいるこのことは、後々のこれに繋がるんだ」という道筋をはっきりと示すことも大事です。学び手が学びの落とし所を理解しメリットを自覚していれば、より一層身が入った学びとなるはずです。

 

ファシリテーションスキルを磨く

今、世界中には高度なテクノロジーが無数に存在しています。ネットワークの速度も一昔前とは比べものにならないほど早くなってきました。デジタルデバイスはますます安価になり、インターフェイスも改善され使い勝手も良くなってきました。つまり、オンライン環境は十分に整っているのです。そうなってくると、学びというものはこれらを巧みに利用し、目的に見合った最適なデザインすることで効果を最大化することができるのです。

コンテンツ同士の組み合わせも重要なポイントです。何をどのように組み合わせるのか。使用するツールや時間配分を決め、主体性を引き出し且つ双方向性を持たせるような学びを構築すること。これらはファシリテーターのスキルにかかっているのです。

私たちフューチャーラーナーズ協会は、ファシリテーターがいかに重要かという認識を予てから持っています。近年欧米で主流になりつつある学びの手法として「ブレンディッドラーニニング」がありますが、これはまさに複数の学びのコンテンツを“ブレンド”して、それぞれの価値を最大限に引き出すものです。ブレンドの方法は無限にあり、よほど精巧に学びをデザインしないとそれぞれの価値が最大化されないどころか相殺し合うようなことにもなりかねません。それほどにデリケートな作業なのです。そこで私たちは、正しい知識に基づいたブレンド手法を学ぶべく「ブレンディッドラーニング・デザイナー養成コース」を設け、ブレンディッドラーニングを実践できる人材を育成しております。

学びは今、大きな変革期にさしかかっています。この変化を楽しみ、新しい手法にしなやかに適応していくことが学びの提供側に求められているのかもしれません。

 

ブレンディッドラーニング・デザイナー養成コースについて

https://rc.persol-group.co.jp/learning/stratified/training/blendedlearning-basic.htmlh

 

 

オンライン研修が主流の世界はすぐそこに

 今はどの企業もとりあえず“オンライン化する”ということだけで精一杯かと思います。それもそのはず、集合研修のノウハウしか持ち合わせていなかったところに突然オンライン化の必然が出てきてしまったので、準備も学習もないままでの移行になってしまったのですから。しかし、今の移行期間を経て近い将来オンライン研修は主流になり、今以上にどの企業も趣向を凝らした研修を提供するようになってくると私たちは考えています。時代に即した最適な学びを純粋に追求していくと、オンラインに行き着くことはもはや自明のように思えます。その時に備えて早い段階からオンライン研修を積極的に活用し、企業として提供できる研修のバリエーションを増やしておくことは大きなアドバンテージとなるでしょう。

  

学びは旅。ラーニングジャーニーという考え

ある製品やサービスを受けた時の体験をユーザーエクスペリエンス(UX)と言いますが、私たちはこれを学びに置き換えて“ラーニングエクスペリエンス”という言葉を使っています。学びの体験ですね。このラーニングエクスペリエンスをデザインするときには様々な要素が介入してきますが、そこに時系列も入れて考えることで学びがさらに昇華すると考えています。

研修で学んだことは、パフォーマンスの向上となって実務に還元されます。しかし、本来学びとは本質的に個人に帰属するもので、始まりも終わりもなく一生続くもの、あるいは一生続けるに値するものであるはずです。私たちが学びを考えるときは、研修期間だけを学びの期間を考えるのではなく、学び手が人生の要所要所でどのような学びを体験しどのような変容を遂げて行くのかということをイメージします。時系列を入れるとはそういうことです。学び手にどのような学びの旅をしてもらうのか…このラーニングジャーニーを設計することが、これからの時代に必要になってくるのではないでしょうか。