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コラム

eラーニングが学びにもたらす効果〜トランスコスモス株式会社の事例から

新たな学びを構築する日本フューチャーラーナーズ協会です。

ここ数年で、企業の学びは著しく形を変えました。集合研修一辺倒だったかつての学びは、テクノロジーの利用で対面/非対面、オンライン/オフライン、同期/非同期などの選択が可能になり、これらを巧みに組み合わせて効果的な学びを構築することが企業の課題となっています。

今回は、時代のニーズを先取りし、2017年には既にeラーニングの導入に着手していたトランスコスモス株式会社の的場章子氏にお話を伺いました。eラーニング導入期の苦労、その後の広がり、そして効果として実感していることなどを、企業の学びを牽引する立場から率直に語ってもらいました。

【的場章子氏プロフィール】

トランスコスモス株式会社

DEC統括 デジタルコミュニケーションセンター総括

オペレーションマネジメント本部

2004年 トランスコスモス中途採用

2015年〜新入社員の育成に携わる

現在、新入社員採用・自部門の人材育成のデジタル化を担当

 

eラーニングの導入で得られたメリットとは?

まず、学習機会が格段に増えたことがメリットとしてあると思います。eラーニングの特性が、「いつでもどこでも好きな時に学習できる」というのは知られたところですが、弊社もまさにその恩恵を受けていると言えます。

例えば、私が所属しているコールセンター部門では、シフトや就業場所がバラバラなので、集合研修の参加機会が少ない社員も発生していました。しかし、eラーニングでは学習機会の「時間」と「場所」を個々が最適化できます。これによりどのようなシフトの人でも、どこで働いている人でも必要な学習を無理なく自分のペースで受けることができるようになりました。

また、弊社の拠点は全国にあり、研修内容に関して標準的な学習プログラムはあるものの拠点ごとに少なからず傾向のようなものがあったのですが、eラーニングの導入によって学びの標準化が促進されました。どこの拠点に配属されても同じ学びを受けることができるというのは、学びの品質保証とも言えますね。学習機会の最適化だけではなく、学びの質も担保されることは社員にとって理想的な環境と言えるのではないでしょうか。

 

実際にeラーニングを導入したことによって感じた効果とは?

学びが可視化されたことが効果として大きいと思います。先ほども申し上げたように、弊社の拠点は全国にありますが、これまでは社員研修の一部が拠点ごとの方針で展開されていたので、可視化されていない部分も多々ありました。しかし、eラーニングの導入により学びのほとんどが可視化されただけではなく、場合によっては私たちが遠隔の社員に個別にアプローチできるようにもなりました。学びの現場で何が起こっているかということに加え、社員一人一人のスキルが可視化されたのはeラーングの効果といえるでしょう。

また、新入社員の育成においてもいくつかの効果を実感しています。トランスコスモスでは新入社員の育成を一年かけて行い、一人の社員につき一人のメンターが付くようになっていますが、学習のアウトプットに対するメンターからのフィードバックを日常的に受けることが可能になりました。新入社員の投稿を随時メンターがチェックして、コメントを返してくれます。そして、同期の投稿やフィードバックもお互いに見ることができるので、切磋琢磨しあって成長することができます。このような学習環境があることによって内容に対する理解が深まり、やがて知識・スキルの定着に繋がるのではないでしょうか。

そして、新入社員の知識・スキルだけではなく、コンディションも可視化できたところはあると思います。新入社員のモチベーションチェックとして、その日の自分の精神状態を「晴れ」「曇り」など天気で表す取り組みは3年前からやっていましたが、その時の天気がプライベートの出来事に起因していることもあるので正確性には欠けていました。そこでやり方を改善し、コップの水で表してもらうようにしました。水が業務量を表し、コップが自分のキャパシティになります。中には溢れてしまっている人もいます。社員の一人一人がどのくらい余裕があるのか一目でわかりますよね。他にも日常的にアンケート機能などを用いて社員の心の機微は拾うようにしています。世代のせいなのか、新入社員を始めとする若い社員はアンケートが好きで、思ったことを忖度なく出してくれます。SNSの普及などで感情を表現することに抵抗がないのでしょう。

一方、教育担当者や研修講師など“学びの提供側”にいる人間としては、これまでの経験と勘ではなく、きちんと数値化されて効果を検証できるようになったことが効果としてあります。研修の手応えはアンケートやクイズなどで拾い、その後の社員のパフォーマンスをフォローすることによって成果に結びついているかどうかまで確認できるので、学びの構築とその後のフォローに対して科学的なアプローチができるようになったことは大きいですね。

 

導入期の苦労、そしてその後の広がり

トランスコスモスはクライアント企業に対してIT化を支援していますが、自社のIT化に関しては様々な業界・業種・業務内容のお取引があるため、時間をかけて慎重に進めていました。また、オンライン研修よりも集合研修の効果が高いとい感じている社員もいたので、eラーニングでこれまでの学びの質を担保することは難しいと思っていたようです。しかし、そうこうしているうちにコロナパンデミックが起こってしまったので、eラーニングの導入を含め急速に社内研修のオンライン化が進みました。

私自身は、オンラインでもやり方次第で従来もしくはそれ以上の効果を出すことができると考えていましたので、それを少しでも多くの人に体感してもらえるよう準備を進めていました。時代の必然も手伝って導入後はあっという間に社内で広がりましたね。部署ごとに創意工夫を凝らしたeラーニングを作成し、新しい学びのあり方を楽しんでいるようにも思えました。特に弊社のWEB制作部門で積極的にeラーニングが使われるようになったことは大きかったです。「オンラインでこんなこともできるんだ!」と思われるようなセンスの良い学びを構築して、他の部門・部署に良い刺激を与えていました。これまではあまりなかった部門・部署間の交流が、eラーニングの導入によってあちこちで起こりはじめているのも嬉しい変化です。

 

オンライン研修の抱える課題とその解決方法

オンライン研修への移行が急速に進んだため、学習環境の整備についてはまだまだ改善の余地があると思います。

実はトランスコスモスでも学習で使用する機材(専用PC・タブレット・webカメラ・マイク)の数が十分でなく、オンライン研修の導入期は環境整備が不十分でした。また、コロナ禍でオンライン化する部分が増えたことにより、必要に応じてサービス部門ごとにプラスアルファで他のシステムの導入も行われるようになりました。

そのため、オンライン研修を提供する側としては通信やシステムトラブルなどの不測の事態にも備えて、二重にも三重にも備えなくてはいけないと思っています。

いずれにしても、社内の各部門がそれぞれ蓄積しているノウハウを相互に共有したり、リードしている部門の事例を見たりしながら、学びがブラッシュアップしていくことを願っています。

 

eラーニングを活用したこれからの学び

eラーニングは場所や時間などの物理的制約が少ないので、毎日の生活の中に学習機会を捻出しやすいという特徴があります。非同期のコンテンツであれば、隙間時間などを利用して細切れに学ぶこともできるので、これまでよりも多くの時間を学習に充てることができます。しかし、一方で担当業務により捻出できる時間にバラツキも発生しています。

これらを踏まえて、トランスコスモスでは学習時間にあえて縛りを設けるという取り組みをしています。勉強量を決めるということです。学びはこれまで以上に必要ですし、テクノロジーの発達により業務が複雑化・高度化された企業においては、社員は学び続けることが必須になってくるでしょう。eラーニングは個人に委ねてしまうと、取り組み度にバラツキが出てしまう傾向がありますので、年間の学習時間を決めることで学習者本人だけでなく上司と計画的に学習できる仕組みにしました。しかし、学びといっても義務であるかのように、あるいは強迫観念にかられたかのようにやるのではなく、学ぶ重要性を受講者が十分に理解し、自分の担当業務・役割やキャリアに応じて必要なものを選択して学習していくための動機付けや楽しく学べるeラーニングのプラットフォームやアイコンのデザインなども重要ですよね。学ぶというマインドが当たり前のように社員に備わることが私たちの目指すところです。

 

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eラーニングの効果を最大化するための「ブレンディッドラーニング」

コロナ禍により企業研修をリモートによるeラーニング(オンライン)に切り替えたという企業は多いことでしょう。必要に駆られて移行してみたけれど、その効果のほどは疑わしい…そう思っている研修担当者様はけっこういらっしゃるのではないでしょうか。「やっぱり集合じゃないと効果がないな」と感じ、来年度以降は再び集合研修に戻ることを考えているという声もちらほら聞きます。程度の差こそありますが、eラーニングを多用したオンライン研修に対する違和感や消化不良を持っている企業は少なからずあるのではないでしょう。

しかし効果という意味においては、集合とeラーニング(オンライン)に甲乙つけることはできないと思います。要は設計次第。eラーニングの効果を感じないというのはその設計が上手くいってないだけで、eラーニングという形態に問題があるわけではないと言えるのではないでしょうか。

そして、そのような“もやもや“を抱えている企業こそ、ブレンディッドラーニングを知る必要があると思っています。

 

「ブレンディッドラーニング・デザイナー養成コース」でより効果的な学びを

日本フューチャーラーナーズ協会が開講している「ブレンディッドラーニング・デザイナー養成コース」は、学びのコンテンツ、デバイス、ツールなどの組み合わせによって効果的な社内研修や会議などを設計するための実践的な手法を学びます。完全オンライン対応の学習機会となっているので、これから常態化することが予想されるオンライン研修にも適用できます。講座では以下のスキルを身につけることができます。

1.新しいテクノロジーを活用し、主体的で協働的な学びを体験しながら、自分でも設計できるようになる

2.集合と個別、2つの学習機会を使い分け、学びの生産性を高めることができるようになる

3.効果的な学習機会を創出するために、既に確立されている理論と新しい理論の両面をおさえ、効果的な学習の場を企画・運営できるようになる

4.デジタル学習コンテンツ制作の基本を、自分自身でコンテンツ制作する実習を通して、時間もコストもかけずに制作できるようになる

5.新しい技術に関する情報を取捨選択する知識ベースをつくり、継続して学び合う仲間を得ることができるので、新しい学びの最新知識や生の事例収集が容易になる

学びは進化し続けています。旧来の学びは“教える”“コントロールする“ことをベースにした「教える人が主役」の学びでしたが、今は”主体的な学びを促進する“ことをベースにした「学ぶ人が主役」の学びに変わってきています。

「ブレンディッドラーニング・デザイナー養成コース」は、これからの学びを牽引する企業の経営者の方や人事・人材育成担当者の方には是非受講していただきたい講座となっております。ご興味のある方は、是非お気軽にお問い合わせください。

 

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