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コラム

今後の研修評価の方向性 ATD24測定と評価に参加して【開催報告】

2024年7月27日(土)、『今後の研修評価の方向性 – ATD24測定と評価に参加して』と題したオンラインセミナーを開催いたしました。

 

登壇者:関根雅泰氏

株式会社ラーンウェル 代表取締役
1972年埼玉県鴻巣市生まれ。州立南ミシシッピー大学卒。東京大学大学院 学際情報学府 修士号(学際情報学)取得。
「研修をやりっぱなしにしない」を合言葉に、各社で「転移促進」や「研修評価」を実践。先行研究で得られたエビデンスを基にした研修の企画、設計、運営、評価が得意。研修業界では、25年の実績をもつ。
著書に『オトナ相手の教え方』(クロスメディアパブリッシング)や、立教大学経営学部の中原淳教授との共著『研修開発入門「研修評価」の教科書』(ダイヤモンド社)『「研修転移」の理論と実践』(ダイヤモンド社)などがある。

今回のセミナーでは、関根氏がATD ICE 2024で得た最新の知見をもとに、研修評価の分野における最新トレンドと今後の方向性について詳しく紹介しました。
冒頭では、ATD ICEの基本情報が説明され、ATD ICE 2024の665のプログラムのうち、測定と評価に関するセッションは15本だったことが示されました。
関根氏は、この数字から、測定と評価の分野がまだ少数派のテーマであることを述べました。そのような中で、今年の特徴として、ジャック・フィリップス氏のROIに関する内容が特に注目を集めていたと語りました。

ATD24の測定と評価セッションの概要

関根氏は、ATD24の測定と評価セッションで主に取り上げられたトピックとして、以下の3点を紹介しました。

  1. Alignment(事業戦略と人事施策の連動)
  2. ROI(投資対効果)
  3. Fun, Easy, Impactful

Alignmentについては、事業戦略と人事施策の連動を図ることの重要性が強調されました。
ジャック・フィリップス氏のアラインメントモデルやロバート・ブリンカホフ氏のインパクトマップが紹介され、研修の目的から最終的なROIまでを繋げて考えることの重要性が示されました。一方で、Alignment実現の難しさも議論され、時間不足、リソース不足、予算不足などが主な障害として挙げられました。

ROIに関しては、ジャック・フィリップス氏の影響力が強く、ROI測定の実践例が多く紹介されました。特に注目を集めたのは、15分でROIを算出する新しい手法の紹介でした。この手法は、クラウドソーシングの考え方を応用し、参加者の集合知を活用するものでした。関根氏は、この手法が参加者の自己肯定感や自己効力感を高めつつROIを算出できる点で非常に興味深いと感じたと述べました。

「Fun, Easy, Impactful」については、評価をより楽しく、簡単で、インパクトのあるものにしていく傾向が強調されました。関根氏は、「インパクトフル」という言葉が「刺さるもの」の適切な英訳だと感じたと述べました。

今後の研修評価の方向性

セミナーの後半では、ATD24参加を踏まえ、関根氏が考える今後の研修評価の方向性について3つの観点から見解を示しました。

  1. インパクト評価とROI:ROI測定の重要性と新しい手法の可能性が紹介されました。関根氏は、15分でROIを算出する新しい手法に注目し、この方法が従来の複雑なROI測定を簡略化し、参加者の自己効力感も高める可能性があると説明しました。さらに、ISO30414やダボス会議の影響に触れ、今後ROIの考え方がより重要になると予測されることを述べました。
  1. レベル3(行動)とレベル4(成果)の関連性:SCM(サクセスケースメソッド)を活用した、行動と成果の関連性の探求について説明がありました。関根氏は、SCMで得られる「良い結果」のコメントが、行動と成果をつなぐ「ミッシングリンク」になる可能性を指摘し、この観点からの研究の重要性を強調しました。
  1. 伴走型評価 Developmental Evaluation(発展的評価):関根氏は、日本評価学会で取り上げられた「伴走型評価」という新しいアプローチについて言及しました。このアプローチは、評価を効果的に活用するために、評価者が主体者と共に歩み、協働していく必要があるという認識から生まれたものです。関根氏は、この手法の特徴と意義を説明し、研修評価の分野での有効性を示唆しました。

 

関根氏は最後に、「研修評価を楽しく、簡単で、刺さるものにしていきたい」という想いを語り、セミナーを締めくくりました。

参加者からは、「『15分でROI』というのは興味深いものでした」「『行動しているのに成果が出ていない』人にフォーカスするのはとても納得しました!」など、セミナーの内容に深く共感したコメントが多く寄せられました。

研修評価は人材開発の重要な要素ですが、その手法は進化しています。
今後も定期的にこのようなセミナーを開催し、最新の研修評価トレンドを探求していく予定です。
ご登壇いただいた関根さん、ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。