【講座レポート】ウェルビーイングトレーナー養成コース第1期 開催報告

「ウェルビーイングトレーナー養成コース 第1期」が、3月10日で最終回を迎えました。
本コースは、AI教育者である笹埜健斗氏をメイン講師に、特別ゲストとしてベストセラー『働くあなたの快眠地図』著者の角谷リョウ氏、臨床心理士の小林亜希子氏をお迎えし、さらにナビゲーターの佐藤昌代氏(気活コンサルタント)、ラーニングサポーターの渡邊壽美子も加わった体制で進行してまいりました。
参加者の皆様がどのような学びを深めているのか、講義内容からエッセンスを少しだけご紹介いたします。
第1回「自分の人生の『コックピット』を奪還せよ」
第1回のテーマは「自分の人生の『コックピット』を奪還せよ」。
講師・コンサルタントとして常に良い場を提供するためには、まず自分自身の心身の状態(ウェルビーイング)をコントロールする主導権を握ることが不可欠です。
前半は笹埜氏より日々の「ご機嫌」を例に、自分の状態を環境のせいにする「乗客マインド」から、機嫌は鍛錬可能なスキルであるとする「操縦士マインド」への転換の必要性が語られました。
特に、スマホの通知1回で失われた集中力を取り戻すには「平均23分」も要するという事実は衝撃的でした。こうした「見えないハイジャック犯」には意志力で抗うのではなく、通知オフなどの物理的な「環境シールド」を構築することの重要性が強調されました。
後半はナビゲーターの佐藤氏より、「ウェルビーイング(あり方)」と「気」のお話がありました。自身のあり方とは、まさにその人から発せられる「気(雰囲気や存在感)」のことです。東洋医学では、人は生まれ持ったバッテリー(気)を日常の呼吸や食事、睡眠でチャージしていると考えます。
デスクワーク等で座りっぱなしだと気が滞るため、その巡りを良くし、自然な状態に戻すことの大切さが語られました。
環境・認知のコントロールと、東洋医学的なエネルギー循環の両面から、AI時代において、まずは講師自身の心身(コックピット)を整えることの大切さを実感する回となりました。
第2回「心のコックピット——感情のアルゴリズムを解析・デバッグする」
前回課題「理想の火曜日を思い描く」の振り返りから始まった第2回。
「10年後を考えるのが予想以上に重かった」「朝起きたら隣に夫がいる火曜日が一番いい」などの声が並びました。
前半では笹埜氏より、行動変容の本質についての講義。
「新年の抱負の90%が失敗するのは、古いアイデンティティのまま行動だけを変えようとするから」という切り口から、まず無意識レベルの自己像を変えることの大切さが語られました。
アイデンティティが変わればライフスタイルが変わる、その例えとしてボディービルダーは食事制限を「我慢」していない、というエピソードが特に印象的でした。北極星(目標)を定め、朝・日中・夜の3ステップで意識を保つ1日の設計法も紹介されました。
続いて「感情のアルゴリズム解析とデバッグ」へ。
出来事と感情の間にある「認知」こそが感情を決めているというABC理論、不機嫌の主犯としての「べき論ウイルス」、感情がハイジャックされた際の「6秒ルール」と冷却テクニックなど、感情を天気のように扱うのではなく仕組みとして理解するための視点が次々と紹介されました。
そしてセッションの終盤にはDifyを使った「ご機嫌ログ」アプリの作り方が共有されました。自分のアイデンティティを見つめ直すことから、感情の仕組みを理解し、AIで実践へとつなげる、盛りだくさんの3時間となりました。
第3回「AIと孤独、そしてセルフコンパッション」
第3回のゲストは、臨床心理士・公認心理師の小林亜希子氏。
テーマは「AIとセルフコンパッション」でした。
講義の冒頭、「完璧に経典を理解しているAIの僧侶と、不完全だけど経験の深い人間の僧侶、どちらの話を聞きたいですか?」という問いが参加者に投げかけられました。このコースではAIを選んだ方も少なくなく、「AIの方がフラットに聞ける」という声も。人間とAIの関係性をめぐる本音が出たところから、AIと孤独というテーマへと入っていきました。
AIを使うほど孤独感が高まるという研究データや、生産性は上がるが幸福度は下がるという大規模調査を紹介しつつ、その処方箋として提案されたのがセルフコンパッション。
困難な状況にあるとき、大切な友人に接するような優しさを自分自身に向けるというアプローチです。「親友が失敗したら」と「自分が失敗したら」を書き比べるワーク、スージングタッチ、理想の上司からの手紙など、実践も体験できる回となりました。
後半は笹埜氏より、Difyの解説と実践へ。
プログラミング不要でAIチャットボットが作れるDifyの仕組みが紹介され、参加者全員でログインしてチャットボットを作り始めるところまで進みました。制作は最終回へと続きます。
第4回「ウェルビーイングの根っこは睡眠にある」
最終回のゲストは、睡眠コーチの角谷リョウ氏(睡眠&超回復研究所)。
「ウェルビーイングと睡眠」をテーマにお話しいただきました。
冒頭は「日本人の睡眠は本当に悪いのか」という問いからスタート。厚生労働省の最新睡眠指針を題材にしたクイズでは、「推奨睡眠時間は6時間」「60歳以上は8時間以上寝てはいけない」という意外な事実が紹介され、問題は睡眠時間の短さではなく質にあると解説されました。
日本人に不眠が多い理由として、夜の街中と施設が明るいこと、家の中が明るすぎること、不安遺伝子保有率が世界最高水準であること、座りすぎ、寝酒文化の5つが挙げられ、「不眠は本人の努力不足やメンタルの弱さではない」という言葉が印象的でした。
睡眠改善のアプローチは、睡眠環境の整備、朝の目覚め改善(セロトニンを出して体内時計をオンにする)、夜のリラックス、腸内環境、認知の変革の5つ。「寝ようとする行為が逆効果」「夜に頑張るのではなく朝から仕込む」という逆転の発想も提供いただきました。
質疑応答では、夜スマホがやめられない、昼寝はどうすればいいか、お風呂を朝に変えているがどうか、休日に昼まで寝てしまう人へのアドバイスはなど、参加者の具体的な悩みが次々と飛び出しました。いずれの問いにも「認知と環境」を軸にした角谷氏の答えは明快で、現場で積み上げてきた実践知の厚みが伝わる時間となりました。
休憩を挟み、後半のセッションへ。
睡眠の話を受けて、笹埜氏からひとつの視点が提示されました。「私たちは『体を酷使している』と言いがちだが、本当は体に合わないOSとして現代社会を無理やり走らせてシステムエラーを起こしている状態だ。主権を取り戻すとはそういうことで、私たちの身体性こそが進化の出発点だったはずなのに、社会に合わせることが大人になることだと言い換えられてきた」。
そのうえで、「だからこそ皆さんそれぞれが自分の探求テーマを持って進んでほしい」という趣旨のもと、初のブレイクアウトセッションへ。
「この4回はあくまで立ち上げイベント。これからが本格スタートだから、皆さんそれぞれが自分の探求テーマを持って進んでほしい」という趣旨のもと、グループに分かれ、参加者それぞれが「自分が探求したいウェルビーイングの研究テーマ」を語り合いました。
キャリアとウェルビーイング、危険作業現場における教育とVR、ウェルビーイングの定義、お母さんと子どものご機嫌など、多彩なテーマが出揃い、全体共有では活発な議論が広がりました。
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最後に笹埜氏より、4回を通じた考察として「ご機嫌」の定義が語られました。
一時的なハピネスでも能天気でもなく、「自分の感情システムの操縦棒を自分で握り、外界の変化に対して主体的に心身の安定を保てる状態」であること。不機嫌になっても素早く元に戻れることが大事で、そのご機嫌が周囲に伝播していく「ご機嫌フォワード」こそが、AI時代のウェルビーイングの本質だというメッセージで、全4回の講座は幕を閉じました。
4回を通じて
環境設計(第1・2回)、心の自己認識(第3回)、身体の回復(第4回)。
それぞれ異なるアプローチでありながら、すべてが「持続可能なプロフェッショナルとして自分を整える」という一本の軸でつながっていた全4回。
第1期にご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。
そして、それぞれの専門領域から深い知見と温かさをもってご登壇くださった笹埜健斗氏、角谷リョウ氏、小林亜希子氏、佐藤昌代氏に、心より感謝申し上げます。