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コラム

オンラインラーニングファシリテーターの重要性。これからの学びに不可欠な存在である理由

新たな学びを構築する日本フューチャーラーナーズ協会です。

ここ数カ月のオンラインによる学びの普及には目を見張るものがあります。企業研修、学校の授業、あらゆる学びのシーンにオンラインが取り入れられていますが、その中身や質についてはまだまだ発展途上にあると言えます。

そこで今回は、オンラインによる学びで重要になってくる「オンラインラーニングファシリテーター」についてお話したいと思います。

 

1、オンラインラーニングファシリテーターとは? 

まず、前提として「ファシリテーター」とは何かについてお話したいと思います。ファシリテーターという言葉は昔からあり聞いたことがある方も多いと思いますが、何となくの理解では「会議やイベントで、場の進行や活性化をする人」となっているでしょう。そもそもの英語のfacilitate(ファシリテート)は「容易にする、楽にする、促進する」という意味で、それをやる人がファシリテーターというわけです。例えば会議などでは発言や参加を促したり話の流れを整理するなどして、場が円滑に進行するように中立的な立場でサポートを行うことが会議のファシリテーターの役割です。会議のファシリテーターや紛争解決などのファシリテーターは知られたところですが、意外と学びの分野では表に出ることが少なく、やっとここ数年で認知されるようになってきました。

そしてオンラインラーニングファシリテーターですが、これはコロナの影響で集合による学びが大きく制限され、リモート型のオンライン研修/学習の導入が加速したことにより急激に需要が高まってきました。学びの分野でのファシリテーターは、先ほども申し上げたようにここ数年で活動が盛んになってきていますが、学びがさらに絞られ“オンライン”という環境に限定した学びのファシリテーターがオンラインラーニングファシリテーターです。テクノロジーを活用し、デジタルデバイスを利用して、リモートも含めたオンライン研修/学習に特化したファシリテーターというわけです。

 

2、その役割と効果

オンラインラーニングファシリテーターの役割には以下のようなものがあります。

【安心安全な学びの場をつくる】

オンラインでの学びでは、集合の時と違って学びを共有しているメンバーの表情や動き、心の機微が読み取りにくいという側面もあります。そしてそのような環境では、発言や発表のタイミングが難しく、何か言いたいことがあっても躊躇してしまうこともあります。そこでオンラインラーニングファシリテーターは、メンバーに対して安心安全な学びの場を作る役割を果たします。必要であればグランドルールを設け、個々の発言や発表を守り、尊重し合えるような環境をつくります。

【学び手同士の結びつきを促す】

オンラインでは双方向性を取り入れやすいという特徴もあります。講師の知識や経験を一方的に与えるだけの学びでは、個々が享受できる学びの総量が講師の蓄積を超えることは起こりません。しかしデジタルツールを活用することによって、講師だけではなく個々が持っている知識や経験が共有でき、学びの総量が増えるという効果を生みます。オンラインラーニングファシリテーターはこのように学び手同士の結びつきを促すという役割も果たします。

【情報の選び方、組み合わせ方のガイドラインを示す】

オンライン環境では、手を伸ばせばあらゆる情報を際限なく入手することができます。しかしあまりの多さで、学び手はどの情報が正しくそして自分がやっている学びに有用なものなのかがわからくなってしまいます。そこで膨大な情報の中から正しいものを選ぶ方法や、その組み合わせ方のガイドラインを示すこともファシリテーターの役割です。

 

3、必要なスキル 

オンラインラーニングファシリテーターに必要なスキルとしては「我慢」と「問いかけ」に集約されます。

「我慢」

ファシリテーターはあくまで中立的な立場で学びを促す触媒のような存在なので、特定の方向に誘導をしたり意見を言ったりすることはありません。決して先に答えを与えずに、学び手の気付きを促すような働きかけをして、学び手の力で答えが導き出されるまでひたすら我慢をします。

「問いかけ」

学び手に対して優秀な問いかけをすることもファシリテーターに求められている役割です。学びの場ではファシリテーターは出た意見に対して否定をするようなことはありません。「どうしてそう考えたの?」「本当にそれでいいの?」と問いかけをし、学び手主体で間違えを発見し、軌道を修正できるようにナビゲートします。

 

4、仕事としての可能性

この数ヶ月で学びの環境は劇的に変化しました。オンラインによる学びを実現するだけのテクノロジーは既に十分あったのですが、私たちは慣れ親しんだ集合という形態からなかなか脱却できなかったのです。しかし、そうも言ってられない事態が世界で起きてしまいました。

企業の集合研修や学校の教室での学習をオンラインに切り替えることは容易ではありません。提供側のITスキルは決して高いものではなく、多くの企業や学校で戸惑いがあったと思います。どんなに優れた講師や教師でも、デジタルツールが使えないことには学びが成立しないのです。仮に使いこなせたとしても、それはまだ学びの初期設定が整ったことに過ぎません。重要なのはオンライン向けの教育をどう設計するかなのです。

オンラインによる学びでは、取り入れることができる要素が多すぎるので、それらをいかに効果的に組み合わせて設計するかが重要になってきます。そしてそこを担うのがオンラインラーニングファシリテーターです。ファシリテーターは講師や教師と同じように教育現場に入り、共にオンラインによる学びをサポートします。知識を一方的に与えるのではなく、学び手同士が教え合い、学び合うことで場が活性化するように働きかけます。もしかしたらこれからの学びの現場では、講師/教師とファシリテーターの両方が当たり前のように存在しているかもしれません。それどころか、講師や教師がファシリテーターとしてのスキルも身に付け、教育現場における彼らの役割が変わってくることすら起こり得ます。知識の獲得部分はAIが個別に行い、講師兼ファシリテーターは場の活性化に徹するという役割分担になる日もそう遠くないかもしれません。

学びの現場にオンラインラーニングファシリテーターが入ることにより、学びというものが一つの正解に向かうものではなく、多様な考えを認め合い新しい価値を発見していくものになってくる。そんな変化が近い将来に起こってくるのではないでしょうか。