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コラム

令和版!進化した4つのファシリテーションスキル

新たな学びを構築する日本フューチャーラーナーズ協会です。

時代は令和。新型コロナウイルスの猛威は未だ収まらず、一時凌ぎと思って取り入れた新しい生活様式もいよいよ常態化しなくてはならない局面になってきました。働き方/学び方についても同じことが言えます。暫定的に取り入れた業務のオンライン化はもはや不可逆的なものになり、この変化に対応するために私たちは確実に新しいスキルを身につける必要が出てきました。

特にこれまでリアルに行なっていた会議や研修のオンライン化は、管理者や提供者そしてファシリテーターにとって切実な問題です。最良の場を構築するためにどうしたら良いのか、そこではどのようなファシリテーションが必要になってくるのか…まさに今課題として立ちはだかっていることでしょう。そこで今回は、日本フューチャーラーナーズ協会の代表理事である浦山昌志がこれらの疑問に対して緊急提言いたします。学びの提供者として常に最前線で活躍してきた浦山の考える進化系のファシリテーションスキルには、未来の学びをリードするヒントがたくさん詰まっていますよ!

 

基本はこれ!ファシリテーションの4つのスキル

近年ファシリテーターの認知度は上がり、今やほとんどの人がその役割をイメージできるかと思います。簡単に説明すると、ファシリテーション(facilitation)とは、ファシリテート(facilitate)の意味の「容易にする、楽にする、促進する」からきています。例えば会議などでは発言や参加を促したり話の流れを整理するなどして、場が円滑に進行するように中立的な立場でサポートを行うことが会議のファシリテーションで、それをやる人がファシリテーターというわけです。会議に限らず教育や創造の現場でもファシリテーションは適応可能で、人との関わり方が大きく変わった今、その役割はいろいろな意味で注目されています。

これまでの“リアルな集まり”におけるファシリテーターのスキルは、以下の4つに要約されていました。

 

1、場のデザインのスキル~場をつくり、つなげる

場の初期設定を行います。最適な議論の進め方や論点を提案して、メンバーと共有します。同時にメンバーの関係性を適切にデザインしてチームビルディングも行います。

 

2、対人関係のスキル~受け止め、引き出す

メンバーの一人一人が意見や考えを出し合い、理解と共感を深めながらアイデアを広げていけるように誘導します。どんな意見でも臆することなく発言できる安心安全な環境を用意するのもファシリテーターの役割です。

 

3、構造化のスキル~かみ合わせ、整理する

最大化された議論を集約していく作業です。テーブルに上がった個々の意見を整理し、かみ合わせていくので、絞り込みや取捨選択も必要になってきます。

 

4、合意形成のスキル~まとめて、分かち合う

議論の最終的な落とし込みをします。合意形成の過程で対立も起きるかもしれません。ここで適切に対処すれば、対立の先の創造的な結論が得られチームの結束力も高まります。ファシリテーターの力量が最も問われるデリケートな作業です。

 

…以上、これら4つのスキルはオンライン化された場においても有効であり、かつ重要なものでありますが、これだけでは十分と言えないのが正直なところです。事項では新たに獲得したいオンラインにおけるファシリテーションスキルをご紹介します。

 

4つのスキル、参考文献:

堀公俊 『ファシリテーション入門』(日経文庫)

堀公俊 『組織変革ファシリテーター』(東洋経済新報社)

 

 

オンラインに変わった時、どのようなファシリテーションスキルが必要になってくる?

 会議や研修のオンライン化とはどういうことか。単純に形式やツールが変化しただけという話ではありません。その場で抱く感情、起こる議論、生み出される価値などがガラリと変わってしまうほどの抜本的な違いがそこにはあるのです。そのような新しい環境においては、ファシリテーターの関わりが従来と同じというわけにはいきません。オンラインにおけるファシリテーションには、新たに以下のようなスキルが必要になってきます。

1、オンラインエンゲージメント

オンラインではリアルよりも離脱者・脱落者が出やすい傾向にあります。生身の人間がそこにいるわけではなく二次元の画面内が全てなので、そこで起こっていることに魅力や面白さを感じなくなると途端に心が離れてしまいます。演出というと意図的な感じがしますが、ファシリテーターには参加者が飽きることなくワクワクした気持ちを保つことができるように場を構築する必要があるのではないでしょうか。それはちょっとした工夫で良いのです。例えば休憩時間に全員参加型のクイズを出す、オーバーリアクションをする、あるいは話にメリハリをつけて区切りを短くするなど、ファシリテーターはあたかもブロードキャスターのように振る舞うことが求められているようです。顔が見えにくいからこそ、大げさと思えるような動作でも躊躇なく行ってみてください。

 

2、同期型のチーム学習マネジメント

 オンラインになるということは、技術的な側面で要素が増えるということです。リアルな会議や研修では場の空気を読み、参加者の心の機微を拾い、ファシリテーターの身一つで円滑な進行ができたのですが、オンラインになるとテクニカルな要素が全体に被さるので、そちらの対応も必要になってきます。そこでファシリテーターには、一人で全てを賄おうとするのではなく、分業によって場を構築するチームマネジメントスキルも必要になってきます。TV番組に例えるとそこにはプロデューサー、ディレクター、カメラマン、そして表舞台に立つ司会や演者がいますよね。ファシリテーターは万能選手になる必要はなく司会や演者の役割を担えば良いということです。これからのオンラインファシリテーターは、役割分担によって場を構築していこうとする開放性と柔軟な心を持つべきではないでしょうか。

 

3、障害対応

 オンラインにはトラブルがつきものです。一昔前よりも格段にネットワーク環境が良くなり、突然通信が途絶えるようなことは滅多になくなりましたが、それでも不測の事態は起こります。画面が映らない、音声が聞こえない、ネットワークに繋がらないなど、いつこれらの事態に陥っても進行を止めないように、ファシリテーターは二重三重にリスクマネジメントをしておくべきです。現に熟練したオンラインファシリテーターは、常に回線を2つ用意し、PCも複数準備しておき、さらには資料のプリントアウトまでしているそうです。テクノロジーを過信せずに十分に備えておきましょう。

  

4、配信・交流技術

 今やオンラインツールには豊富な機能が備わっていますが、それらをファシリテーターが使いこなしているかどうかはまた別の問題です。チャットやディカッション、クイズやアンケート、動画配信や音声スライドなどを巧みに使いこなせば、あたかもリアルに場を共有しているような密度の濃い会議や研修が実現されます。参加者同士の交流が活性化されるかどうかは技術力次第ということです。

 

5、準備・練習

 準備と練習は必須です。オンラインのファシリテーションでは、いくら流暢に喋ることができても円滑な操作をマスターしていないと進行にもたつきが出てしまい効果が台無しになってしまいます。そうならないためにもファシリテーターは本番前に入念な準備をし、十分なシミュレーションをしておく必要があります。オンラインの場では操作一つで全く違う世界に連れて行かれてしまうので、簡単なことでも準備を怠らず確実に実行できるようにしておきましょう。

 

オンラインの場では新しいマナーを身につけよう

オンラインのファシリテーションスキルを手に入れること、それは異国の新しいマナーを身につけるようなものです。リアルな場においては五感をフルに使って対話することができるので、お互いが多くを語らずとも通じ合えることができました。しかしオンラインでは視覚と聴覚から得られる情報が全てなので、その中で創意工夫を凝らした伝達をしなくてはなりません。やや大げさかなと思えるくらいの表情やジェスチャーは、オンラインでは当たり前のことなのです。

そして、照明や音声も場を左右する重要な要素です。画面が暗くて顔がよく見えなかったり、音声が聞こえづらかったりしたら、ファシリテーションの効果が半減してしまいますよね。ちょっとした不具合が致命的になってしまうのがオンライン環境です。デジタルツールの脆弱さが露呈しないように、過剰と思えるくらいの丁寧な作り込みが必要かもしれません。

全ては参加者がストレスを感じることなく心置きなく学びに没頭できるようにするためのものです。これらはファシリテーターが持つ思いやりと優しさによって生まれた新しいマナーとも言えるのではないでしょうか。

 

ブレンディッドラーニング・デザイナー養成コースで時代に即したスキルを

 企業の学びを牽引する研修担当者にとって、オンラインファシリテーションスキルはもはや必須になってきました。時代の変化を敏感に察知し、テクノロジーの恩恵を享受して最良の学びを提供することは企業の使命とも言えるのではないでしょうか。日本フューチャーラーナーズ協会では「ブレンディッドラーニング・デザイナー養成コース」を開講しております。この講座では効果的なオンライン研修の設計手法を学ぶと同時に、実践的なファシリテーションスキルも見につけることができます。ご興味のある方は是非お気軽にお問い合わせ下さい。

 

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